GMTマスターⅠ(Ref.1675)のダイアル(文字盤)とベゼルインサートの種類について

Ref.1675(GMTマスターⅠ)は20年間の製造期間の中で細かな仕様変更が幾度もあった大変人気の高いロングセラーモデルです。
ダイアル(文字盤)、ベゼルインサート、ブレス等は年代によって異なるため、レアモデルも複数存在しており、マニアの中でも人気が高いリファレンスとなっております。
特に製造初期のミラーダイアル(艶のある文字盤にゴールドレター)や、太字フォントのインサートディスクがついている個体は人気が高くとても高額になっています。
今回はそんなRef.1675のダイアルとベゼルインサートについて解説をしていきたいと思います。

※当記事は専門書や時計店、愛好家の方から得た情報をもとに執筆しております。なるべく正しい情報を掲載できるよう最善の注意を払って執筆しておりますが、一部の情報は真偽性について未検証(検証不可)の場合がございます。(特に古いモデルは複数の説(製造年や仕様等)が存在するため事実と異なる場合がございます。)そのため、情報がすべて正しいといった保証はできかねる点をご了承の上、読み進めていただければと思います。

ダイアルの種類

Ref.1675は、年代によって様々なダイアルが存在し、個体によって経年変化もそれぞれ異なるため、ベゼルインサート(こちらも様々な種類があり退色の仕方がそれぞれ異なる)ととの組み合わせにより、二つとして同じものはないまさに一点物のヴィンテージウォッチとなります。

唯一無二の雰囲気をもつミラーダイアル

ミラーダイアル初期の個体だけに存在するミラーダイアルは特に人気が高く、艶のあるブラックの下地にゴールドレター(金字で彫り込みの書体!)の仕様は唯一無二の迫力があり雰囲気抜群です。
ただし、そんな魅力的なミラーダイアルにもデメリットは存在します。それは下地の上にコーティングされているニス系の塗料(1950年代半ばから1950年代後半はラッカー系)が、経年変化によりひび割れたり、薄くなって艶が失われてしまったりすることです。

日常使いにもおすすめのマットダイアル

マットダイアルミラーダイアル以降のマットダイアル(艶が無く書体は白字)はそういった耐久面での不安は取り除かれており、現代でも日常使いに堪えうる十分な仕様となっております。
マットダイアルはMK(マーク)1から6まで細分化されており、希少なダイアルも存在します。

ダイアルそれぞれの年代と特徴

ダイアル種別 年代と特徴
ミラーダイアル ミラーダイアル【1959~1968年頃】
艶のある下地にゴールドの書体が特徴的で、ミラーダイアルの中にもバリエーションがいくつか存在します。
ミニッツサークル・・・秒針目盛の周りに線(サークル)が入っている仕様
アンダーバー・・・ダイアル下部の表記「OFFICIAL CERTIFIED」の下に「下線」が入っている仕様
6時ドット・・・6時位置の秒針目盛上にドットの夜光が備えられている仕様
マットダイアル
Mark-1
マットダイアル Mark-1【1968~1972年頃】
マットダイアルの最初期ダイアルで、王冠下の「ROLEX」の「E」の真ん中部分が長いことから「ロングE」と呼ばれています。
マットダイアル
Mark-2
マットダイアル Mark-2【1972~1973年頃】
こちらもマーク1と同様に初期ダイアルとなり、ROLEXの字体が太く、OYSTERとPERPETUALの文字間隔が広い、王冠のくり抜かれた楕円部分が上下に潰れているのが特徴です。
マットダイアル
Mark-3
マットダイアル Mark-3【1976~1978年頃】
マットダイアルの中で最も希少で、他年代のマットダイアルとの違いがはっきりしているダイアルです。秒目盛が長く、小ぶりなインデックスが中央に寄っているのが特徴で、放射状に見えることから「ラジアルダイアル」と呼ばれています。
マットダイアル
Mark-4
マットダイアル Mark-4【1975~1979年頃】
初期のダイアルに比べると王冠が縦長でシャープな印象になり、書体も細字になっています。後述するマーク5と似ていますが、ダイアル下部の表記の位置関係が異なります。(「GMT-MASTER」の「M」の右側の垂直線がマーク4では「C」の真ん中、マーク5では「CH」の間に来ます。)
マーク4のダイアル表記
マットダイアル
Mark-5
マットダイアル Mark-5【1977~1980年頃】
前述したマーク4と似ていますが、マーク5は「GMT-MASTER」の「M」の右側の垂直線が「CH」の間に来ます。
マーク5のダイアル表記
マットダイアル
Mark-6
マットダイアル Mark-6【1978年頃(推定)~】
マーク6は初期のサービスダイアル(ROLEXの正規修理時に使用された交換用ダイアル)となります。非常に縦長でシャープな王冠が特徴的(書体も若干細字?)で、マーク6は「GMT-MASTER」の「M」の右側の垂直線が「C」の左端にわずかに掛かっています。
マーク6のダイアル表記
以降のサービスダイアル サービスダイアルマーク6以降のサービスダイアルとなります。王冠が縦長ではなくなっていて、トリチウム夜光とルミノバ夜光のパターンが存在します。

ベゼルインサートの種類

個体の印象を決定付けるベゼルインサートRef.1675のベゼルインサートは年代、個体によってフォントの種類・太さ・大きさ、それから赤青の退色の仕方もどのような環境下で使用されてきたかで全く異なるため、同じものは二つとして存在しない一点物となります。

個体の印象を決定付けるベゼルインサート

Ref.1675の印象を決定付ける重要なポイントの一つとして、ダイアルと針の夜光塗料の焼け具合が挙げられますが、それと同じかそれ以上(個人的にはそれ以上)に印象を左右するのがベゼルインサートのフォントの太さや退色具合となります。
わかりやすい動画がありますので、是非一度ご確認ください。

いかがでしたでしょうか。同じ個体でもベゼルインサートが変わるだけで全く異なる印象を受けるかと思います。特に黒ベゼルに関しては時計の種類自体が違って見えるかと思います。

ベゼルインサートそれぞれの年代と特徴

以下の説明の中でベゼルインサートの年代を分けるために「Mark-●」といった番号をつけておりますが、ダイアルの説明で用いた「Mark-●」と年代が完全に合致しているものではありません。それぞれの順番を示しているだけですので、混同しないようにご注意ください。(例、ベゼルインサートのMark-1=マットダイアルのMark-1と同じ年代の物というわけではありません。)

Mark-1 / 前期

Mark-1-bronze

Ref.1675の最初のベゼルインサートとなります。12時位置の三角形が正三角形、書体にセリフ(ハネ)が無く、書体の太さは基本的に細字のものが多い印象ですが、太字のものも存在しています。
セリフ(ハネ)の有無は「12」の2の終わりにハネがあるか否かで判断しております。以降は「12ハネあり」「12ハネなし」と表現していきます。
12ハネ

年代 1959~1968年頃
搭載対象となる個体(ダイアル) ミラーダイアル
裏面の色
12時位置の三角形 正三角形
フォントの特徴 12ハネなし/細字※太字もあり
退色の特徴(一例)
青:抜けやすい/グレー系
赤:抜けにくい/ブロンズ・オレンジ系

Mark-1 / 後期(フクシャ)

Mark-1-fuchsia

マットダイアルの最初期に取り付けられていることが多い通称フクシャベゼル(赤部分が独特なヴァイオレットカラーに退色)となります。前期と同様に12時位置の三角形が正三角形、書体にセリフが無く(12ハネなし)、書体の太さは基本的に中字のものが多い印象ですが、こちらも個体差があります。

年代 1964~1968年頃
搭載対象となる個体(ダイアル) ミラーダイアル
マットダイアル Mark-1
裏面の色
12時位置の三角形 正三角形
フォントの特徴 12ハネなし/中字※個体差あり
退色の特徴(一例)
青:抜けやすい/スカイブルー系
赤:抜けにくい/バイオレット系

Mark-2 / 前期(メガファット)

Mark-2-megafat

【私物画像-Ref.1675 MK-2】

MK1より明らかに文字が大きく・太くなったMK2は、特に前期のメガファットの人気が高いです。ヴィンテージ感が強く大変雰囲気が良いメガファットは、ミラーダイアルにも装着されていることが多く、以前はこのメガファットがRef.1675の最初期のインサートと考えられていました。

年代 1960年代後半~1973年頃
搭載対象となる個体(ダイアル) マットダイアル Mark-1
マットダイアル Mark-2
裏面の色
12時位置の三角形 二等辺三角形
フォントの特徴 12ハネなし/8の上部の円が楕円/極太字
退色の特徴(一例)
青:抜けにくい/濃紺系
赤:抜けやすい/ピンク系

Mark-2 / 中期(ファット)

Mark-2-fat

【私物画像-Ref.1675 MK-2】

メガファットより文字が細く、大きくなっています。マットダイアルのMark-2に取り付けられていることが多いベゼルインサートとなります。

年代 1960年代後半~1973年頃
搭載対象となる個体(ダイアル) マットダイアル Mark-1
マットダイアル Mark-2
裏面の色
12時位置の三角形 二等辺三角形
フォントの特徴 12ハネあり/8の上部の円が楕円/太字
退色の特徴(一例)
青:抜けにくい/濃紺系
赤:抜けやすい/ピンク系

Mark-2 / 後期(ノーマル)

Mark-2-normal

【私物画像-Ref.1675 MK-5】

ファットより文字が少し細く、大きくなっています。(ファットには太さがいくつかあると考えられ、ノーマルの太さとあまり変わらないものも多く存在します。)マットダイアルのMark-3~5に取り付けられていたと考えられるベゼルインサートとなります。ただし、マットダイアルのMark-4~5は交換ベゼル(後述するMark-3~4)に交換されている個体も多く見かけます。オリジナルの状態を見極める場合はこちらのMark-2のノーマルを基準に考えると良いかと思います。

年代 1973年頃~最終型
搭載対象となる個体(ダイアル) マットダイアル Mark-3
マットダイアル Mark-4
マットダイアル Mark-5
裏面の色
12時位置の三角形 二等辺三角形
フォントの特徴 12ハネあり/8の上部の円が楕円/中字※文字が大きめ
退色の特徴(一例)
青:抜けやすい/鮮やかな青~スカイブルー系
赤:抜けにくい/鮮やかな赤~ピンク系(一部バイオレット系)

Mark-3 / 交換用ベゼル(Ref.16750共用)

Mark-3 / 交換用ベゼル

【私物画像-Ref.1675 MK-1】

サービスベゼルと呼ばれ、1970年代後半(推定)にロレックスの正規修理でベゼルインサートの交換を行った際に取り付けられていたベゼルインサートとなります。1978年頃から販売が開始された後継機のRef.16750の初期はこちらのベゼルインサートであったと考えられます。書体はMark-1とよく似ていますが、文字のサイズが若干大きく、細字となっています。基本的には裏面は赤となりますが、一部青も存在します。

年代 1970年代後半(推定)
搭載対象となる個体(ダイアル)
裏面の色 赤※青もあり
12時位置の三角形 二等辺三角形
フォントの特徴 12ハネなし/8の上部の円が若干楕円/細字※文字が大きめ
退色の特徴(一例)
青:抜けやすい/鮮やかな青~スカイブルー系
赤:抜けにくい/鮮やかな赤~ピンク系(一部バイオレット系)

Mark-4 / 交換用ベゼル(Ref.16750共用)

Mark-4

【私物画像-Ref.1675 MK-2】

こちらもMark-3同様にサービスベゼルとなり、Ref.16750にも搭載されていたベゼルインサートとなります。8の上部の円がほぼラウンド形状になり、さらに文字のサイズが大きくなっています。基本的には裏面は青となりますが、一部赤も存在します。

年代 1980年以降(推定)
搭載対象となる個体(ダイアル)
裏面の色 青※赤もあり
12時位置の三角形 二等辺三角形※頂角がより鋭角
フォントの特徴 12ハネなし/8の上部の円がほぼラウンド/細字※文字が大きめ
退色の特徴(一例)
青:抜けやすい/鮮やかな青~スカイブルー系
赤:抜けにくい/鮮やかな赤~ピンク系(一部バイオレット系)